賢い社会人にとって、従来式の非効率な学習スタイルや根性論による学習支援は、無用の長物といえます。
こちらの記事では、そうした根性論や一個人の見解ではなく、優秀な研究者によって導きだされた科学的に正しい学習計画の立て方を、本検定用に適用した形で解説します。
合格率を1%でも高めるために、学習計画を立てる際の参考にしていただければ幸いです。
この記事はこんな方におすすめ
- 完璧な学習計画こそが合格へ繋がると思っている
- 過去に、計画通りに進められなかった経験がある
- 学習のモチベーションが一度下がると、立ち直るのに数日かかってしまう
この記事の有用性・信頼性
・良質な論文を多く引用しているメンタリストDaiGo氏の著書『倒れない計画術』をベースにしています。
・上記書籍の内容を、超ニッチな本検定向けに適用した唯一無二の記事となっています。
計画倒れが起こる原因は「計画錯誤」と「過信」
計画倒れの事例
まずは計画倒れの事例を挙げてみます。
- 新年早々など、前もって学習計画を立てるも、年度代わりの異動や業務内容の変化で、学習が思うように進められずに途中で挫折・・・
- 学習初期はなんとかこなせていた毎日の学習量も、その量が重荷感じはじめ、途中から達成が難しくなり、学習への意欲が一気に下がってしまい挫折・・・
- 急な飲み会や用事等により、日々の学習が思った通り進捗せずに計画が破綻し、挫折・・・
いかがでしょうか?これらは容易に想像できることであり、実際に起きてしまっていることだと思います。
なぜ計画倒れが起きるのか?
これらが起こってしまう原因は、検定対策に対するモノサシが無いままに学習計画を立ててしまうこと(=計画錯誤)と、「あれもこれもできると思い込みやすい脳の性質」(=過信)によるものです。
ヒトの脳は「確証バイアス」という性質があり、これが働くと、人は「こうあって欲しい結論」ありきの理由を集めて計画を立ててしまいます。
確証バイアスとは?
「こうあってほしい結論」を設定した際、それを肯定する情報ばかりを集め、都合の悪い合致しない情報を無視する傾向のことで、人が判断を誤る原因とされています。そういう傾向のある人、意外と身近にいますよね。
学習計画の段取りが崩れ、目指していたゴールにたどり着きそうもないと分かったときに、モチベーションが一気に下がり、投げ出したい気分になります。これは心理学の世界で「どうでにてもなれ効果(The What-The-Hell Effect)」と呼ばれ、論文でも使われている用語です。後述しますが、段取りを立てる時は先に「失敗する、挫折する、計画外のことが起きる」ということを計画に盛り込んでおくことが大事になります。
科学的に正しい計画へと導くたった一つの原則「MACの原則」
MACの原則とは
挫折の原因が理解できたところで、実際に学習計画を立てるにあたりどのような手法を使えばいいのか?という疑問にお答えします。
評価の高い先行研究をメタ分析したアイントホーフェン工科大学の研究チームによるMACの原則が、現時点(2018年時点)で最もエビデンスのある研究成果とされています。
このMACの原則は、「学習への取り組みのハードルを低くする」のに、とても有効な手段と言えます。この原則を応用した本検定用の目標設定は後述しますが、少しだけ触れながら説明します。
M=Measurable(メジャラブル)測定可能性
目標(ゴール)が数字として測定可能なこと
目標を「合格する」といったものではなく、数値的に可視化されたものとする必要があります。詳細は後述しますが、「◯◯点を目標として検定に合格する」といった具合ですね。
A=Actionable(アクショナブル)行動可能性
目標(ゴール)を正確に把握し、そこにたどり着くまでのプロセスを明確に書き出せること
実際に過去問にトライして難易度を把握(あるいは、ある程度過去問をかじってみてるだけでも良いと思います。)し、考査Aと考査Bの配点などを調べて、目標合格点への積み上げイメージをもつことが先決かと思います。それからの作業ですね。目標に辿り着くまでのプロセスを正確に書きだします。
C=Competent(コンピテント)適格性
目標を達成することが、自分の価値観に基づいていること
目標の達成が自分の価値観とマッチしてるか、を確認します。目標を達成することが、自分の人生をよりよくしてくれる選択かどうかを見つめ直す部分です。MACの原則では、このコンピテントが最も重要のようです。
ここはみなさんが置かれた立場や考え方によって設定は異なりますね。それでも「なんとなくみんな受験するから流れで私も受験します・・・」みたいな人でも合格できる試験だったりしますので、ここをどれくらい真剣に考えるかはみなさんにお任せです。
MACの原則の優れている点
MACの原則が優れている点は、感情に左右されずに行動に専念できることです。
日々の学習において望ましい心理状態は、「絶対に合格するぞ!」という肩に力の入った感情が前面に出た状態ではなく、むしろ、無心で学習(タスク)を淡々とこなしている状態です。
MACの原則に従えば、目標達成までのプロセスが可視化されているので、その進捗が見えやすい点でモチベーションの維持が容易になります。
「MACの原則」と合わせて使いたい「疑問型セルフトーク」
MACの原則を表面的に使うだけでは、脳が勝手に高揚して目標を達成した自分を想像してしまい、行動する前から満足してしまう可能性があります。そうすると、実際に学習を始めるとモチベーションが下がる傾向があるそうです。
また、目標の設定時においてポジティブな気持ちを入れすぎると、同様の傾向が顕著に出るとの見解もあります。
そこで、感情に左右されないMACの設定を助けるテクニックを使いましょう。それが疑問型セルフトークです。
使い方は簡単で、以下の通りです。
- M:目標設定は「検定に合格する!」ではなくて、「どうしたら合格できるだろうか?→合格条件はどうやったら達成出来る?→合格基準点の達成難易度は?」という具合に疑問形式で掘り下げていくことで、目標をメジャラブルにする助けとなります。
- A:目標を達成するにはどうしたら良いか?を掘り下げていきます。こうして必要なステップの可視化を手伝います。
- C:なぜ目標を達成したいのか?といった具合に、コンピテントを探る助けとなります。
注意点は一つだけです。
否定的な疑問形は使わないこと。ネガティブな思考は逆効果で、あくまで肯定的な疑問形を使いましょう。
「MACの原則」を適応した具体例
実例
では、実際に本検定用に応用した一例を示します。
M:メジャラブル
検定に合格するために、目標値として「75~80点を設定」
(合格するためには、最低でも67点は必要・・・
(合格基準点は毎年変動するので基準点に1割上乗せして74点は取りたい・・・
補足します。考え方次第ですが、数値目標は100点でも90点でもいいと思います。ALUでは「固く70点程度を取得する」方法を推奨しています。しかし、かといってぴったり70点にこだわっても仕方ないので、「75点から80点くらい」といった幅を持った数値に、適当に照準を合わせておけばいいかなとか思っています。
A:アクショナブル
1 考査Aは34点満点を取れるように◯月頃までに復習ステージに入る。そのために〇〇を◯月頃までに・・・
2 考査Bは毎年出題されている建蔽率、容積率、用途規制を確実に得点(推定〇〇点)できるように計画Ⅰは◯月頃に、計画Ⅱは◯月頃に完成させ、あとは復習ステージに入る。
3 考査Bの・・・
補足します。学習計画の目安は本検定メインページの150日スケジュールの通りです。ここでは、得点の積み上げ方を意識して、後述する後方プランニングにより試験日から逆算したスケジュールを組むことをおすすめします。
C:コンピテント
「社内評価の向上」
「スキルアップ」
「収入増」
補足します。こちらの例に挙げた3つに納得感を覚えて設定される方が多そうです。行政庁職員だと、直接「収入増」に繋がらなかったりするので、「人生における試験勉強を無くす」とかでもいいかも知れません。実際にそう思って学習している人もいました。
目標値の設定におけるアドバイス
「目標合格点」の設定について、補足的なアドバイスです。
最初は「100点を取得することに意味はあるのか?80点はどうか?70点は?やっぱ85点くらいかな?」という感じにブレると思います。事実、私も最初は100点満点を取得する方法を探すところから入りました。
ここでみなさんに、2つほど事実をお伝えします。
・合格者には、「合格」以外の細かな採点結果の通知はなく、また、合格順位といった序列はつかない
・検定上、時間対得点効果(費用対効果B/C)の低い問題が存在する
ここを理解した上で、その目標合格点の設定に、自分なりの意味を見出してみてください。
計画通りに進めるための「4つ」のテクニック
参考としているメンタリストDaiGo氏の書籍から、重要度が高く、かつ、実践が容易なテクニックを厳選しました。また、本検定用に適用例を挙げますので、みなさんの思考の時短も狙います。
if-thenプランニング
これは、学習を習慣化するテクニックとして優秀で、「もし、何々をしたら(しようと思ったら)、◯◯をする。」というルールを決めておくものです。皆さんも実は普段の生活の中で使用しているテクニックです。
例えば、
- ご飯を食べたら歯を磨く
- 朝起きたらカーテンを開ける
- 帰宅したら手を洗う
といった具合です。
これらの習慣は、生まれつき自然に身についているものではなく、小さい頃に訓練を重ねた結果なのです。この習慣化を意図的に学習へ結びつけるテクニックがif-then(イフゼン)プランニングです。
具体的には、
- 朝起きたら、昨日解いた最後の問題だけ復習する
- 始業前に着席したら、考査Aの問題を1問解く
- お昼休憩の前に、建築物省エネ法の法文を眺めてから席を立つ
- YouTubeで娯楽動画を観ようと思ったら、考査Bの問題を1つだけ解く
といった感じでしょうか。簡単なルールで構いません。習慣化されたときの爆発力は計り知れません。
とはいえ、科学的に人間が新しい習慣を身につけるには(タスクにもよりますが)40日〜60日程度かかるとされておりますので、早めにルールを決めることをお勧めします。
最悪を想定するコーピングイマジナリー
あまり聞き慣れない用語ですね。こちらは例を挙げた方が理解しやすいかと思います。
例えば、本検定における最悪のケースとして
- 学習計画に支障する急な出張等が発生した
- 試験本番で過去問にはない問題が出題された
ということが考えられます。もう最悪ですね。
これに対して、具体的な対応策をあらかじめ想定しておくことで、心理的な安定を狙うテクニックのことです。
「急な出張等」に対しては、以下のような備えをします。
・考査Aは、A5サイズに小さくしたまとめノートを作成し、出張先のホテルや移動中に復習できるようにしておく
・考査Bは、解答例をスマホで動画撮影したり、持ち歩き可能なまとめノートを自作しておく
「過去問にはない問題の出題」に対しては、以下のような気持ちで備えます。
・新出問題の出題時は、合格点が相対的に高くなる傾向があり、全体的に難易度は低い試験となる。よって、いつもより楽に得点が重ねられる。浮足立たずに、出来る問題は確実に得点する。
・過去の傾向から、新出問題は、実は簡単である可能性が高く、法文や告示を正確に順に追っていけば答えが容易に導き出せる可能性がある。
大体これくらいの対策で十分ではないでしょうか。
チートデイを計画する(挫折を前もって計画)
これはポルトガル・カトリック大学におけるダイエットの継続性を扱った実験結果を応用したもので、毎日のハードワークよりも、わざとサボる日(=チートデイ)を設けた方が、学習は継続するというもの。
理論上は、チートデイの目安は2週間に1回のペースで、全体量のうち15%程度がよい、とされています。
ALUが示す150日スケジュールに応用すると、その15%は22.5日となります。これを4月から8月末まで均等に散らすと1週間に1日程度の割合でチートデイが設定されます。
どうでしょうか?思った以上にサボれると思いませんか?
もちろん、ALUが示す150日スケジュールも、このチートデイによるサボりを含んだ日数となっていますので、ご安心ください。
後方プランニング
人間には「現在バイアス」というものが存在しており、これは、目先の項目を重要視しがちな性質の事で、本番前の重要な時期のタスクを軽視してしまいがちな傾向があるようです。
そこで、8月末の試験当日から逆算的にタスクを埋めていく方法が推奨され、これを後方プランニングと言います。
この点、フローチャートやクリティカルパスを理解している我々建築・建設業界の人間としては馴染みのあるテクニックかと思います。
ALUが示す150日スケジュールは、後方プランニングによって構成されていますのでご安心ください。
あとは、審査経験の有無や期間、時期、また、得意分野(意匠、構造)によって学習速度に差が出てくると思いますので、適宜修正してみてください。
まとめ
最後に紹介してきたテクニックをまとめます。
科学的に正しい学習計画の立て方
- 「MACの原則」×「疑問型セルフトーク」により正しい目標を設定する
学習を計画通りに進められる“4つ”のテクニック
- if-thenプランニング・・・◯◯をしたら〇〇をする。
- 最悪を想定するコーピングイマジナリー・・・急な出張、過去問にない問題の出題時にどうするかを想定しておく。
- チートデイを計画する・・・週1程度のサボり日を設ける。
- 後方プランニング・・・試験日から逆算してタスクを設定する。
最後に
とはいえ、学習計画を立てるのに数日もかけていては勿体ないですね。完璧は目指さず、ざっくりとした学習計画を立ててみましょう。そこからアップデート・微修正していけばOKです。
最後に、本末転倒だと思われるかもしれませんが、ALUが示している150日スケジュールは一つの目安であって、この日数に囚われる必要は全くありません。
以上、何か一つでもみなさんにとって参考となったものがあれば幸いです。